鈴木美津子ガーデン散歩 VOL 6(2020年6月) アンテロープバレー軽井沢 より
森のお手入れと題し、庭全体のバランスが良く、樹木の育成環境も考えた仕立て方を学びます。
お庭で枝が枯れてくると心配される方が大勢いらっしゃると思うけれどそれは自然なんです。
このお庭の木々でも分かるように、下の枝は日の当たる分量で育ちますので、どうしても下枝から競争に負けて枯れてきます。枯れてくる所は日当たりの悪いところ。
2~3年したら枯れるなというのを予想して前もって間引いてあげれば、他の木が早く元気になります。下にある枝はみなお日様の取り合いで分量の少ないのは、木々が自分で下枝を整理して上に伸びようとするので、心配ないです。でも置いておくと落ちてくるので整理をする。それ自然なので、木が弱って枯れそうというのとは違います。
ちょっとその辺にカラマツがあるんですが、同じカラマツでも細いのと太いのがある。太い方が育ちが元気、するとその近隣には細いカラマツがある。それは一緒に芽生えたとしても負けているという事。すると何年か先にはどんどんそれは弱ってきます。それを間引いてあげると太い方のカラマツは伸び伸びと元気に育つ。
下枝は必要ないのできれいにすっきりと枝払いすれば、だいぶ整理されて、そしてその下にまた木漏れ日で実生のツリバナやモミジやコブシが出てきます。代々変わるので手入れしてあげます。
そこにも枯れ枝がいっぱいありますが、あれはちょっと引っ張ると落ちます。ちょっと引っ張れば落ちるということは、強い風が吹いてその下を歩いたら危ないということですね。一度、業者さんに枝払ってもらったらよいと思います。
細くなって混んでいるカラマツは、「ごめんね、隣の木に日が当たらないので切るけど、役に立つんだよ」と、私は木にも耳があるように思うので、諭して切ります。
カラマツも何でもそうですが、樹木の頭を切ったらアウトです。1本でも頭を切ったら、その森のバランスが崩れます。その頭を切った所から何十本も新芽が出ます。切られたところに養分がいきますから、切られたところから何十本も枝が出る。それが、1年目はモコモコと30㎝ぐらいになり、2年目は50㎝ぐらい、3年目は1m50cmぐらい、そこはもう傘を広げたようにモコモコの枝の幹になります。
造園屋さんにこれが邪魔と言うと、みんな切ります。そうするとそこに落下傘が開いたように枝がばーとなって見苦しいです、伸び伸びとした感触はないですね。無意識に見ても癒される木ではなくモコっと固まってる。そういう木には小鳥もいきません。害虫が大発生します。風が通らない。
枝の先もそうです、切られたところからは枝がいっぱい出ることを覚えてください。東京の生垣はそれを利用しています。柘植でも紅要でも切った所から枝がいっぱい出て板のように生垣になるんです。あれはそれでよいですが、この森で落下傘を被ったような木が1本あったら奇妙です。
樹木の頭を切ったら、2~3年に1度 手入れをしなければいけない。上の頭を切ったら高所作業だから料金も高いです。見苦しくて不経済です。それよりこの森のように伸び伸びと、この木は滅多に手入れはいりません。このまま自然に伸びてくれます。枝の先つめたり、幹をつめたりすると、不経済で忙しくて良いことは1つもないです。
でも幹を切ってバサッとやると手入れは速い。1本ずつこしらえて手入れするのは時間がかかります。1日に何本もできないです。だから造園屋さんは仕事をこなさなければならないので切ってしまう人は多いです。でも、施主はそうしないでと言ってください。造園屋さんの進めるままにこれもあれもとするのでなく、変だなと思ったら連絡くだされば、いつでも診断に来て、軽井沢らしいお庭のアドバイスをします。
程よく光があるから、高木、中木、低木が育つんです。上を詰めてモコモコになったらその下の木はお日様不足で枯れます。
皆さん、自分の庭を見て、枝を切っているなと思ったら、その枝は間引いてください。3~4本ごちゃごちゃしていたら1本だけ残して、周りは根元1mm 残さず切ってください。1mm、1cm 残すとそこからまた枝が出てきます。間引くときは幹に沿って残さないで切る。深く切ると幹がえぐられて傷口が大きくなる。4~5cmからの切り口には「トップジン・カルスメイト(切り口防腐剤)」という歯磨きチューブみたいのを塗ってください。カビと病気予防になります。
※今回の動画は、YouTubeでご覧いただけます。