花木の知識

圧巻!フシグロセンノウのお花畑


鈴木美津子ガーデン散歩 VOL 15(2020年8月) 軽井沢別荘地 より

絶滅危惧種であるフシグロセンノウが群生して咲き誇る、圧巻の庭をご紹介します。

群生を嫌う絶滅危惧種、フシグロセンノウのお花畑

軽井沢の紫水京別荘地のハルニレの木

 

閑静な軽井沢の別荘地を進んでいくと

鮮やかな朱色のお花畑が見えてきます。

 

それが群生を嫌う、

絶滅危惧種であるフシグロセンノウだと知ると

人々は驚き、歓声をあげずにはいられません。

 

「花の画家」と呼ばれた女流画家、堀文子さんが

「気位の高い」この花に魅せられたように

私もすっかり虜になってしまった、と語るオーナー

 

既存の概念を覆す、

群生するフシグロセンノウのお花畑の秘密

どうぞお楽しみください。

 

造園家・鈴木美津子

 今日は、素晴らしい所にご案内します。
絶滅危惧種のフシグロセンノウの信じられない群生の場所がありまして、

3年前から1度きちっとお話したいと、3年かかり叶いました。


今日はオーナーの方にご都合いただいて現場に来ています。

 

フシグロセンノウは群生を嫌う花々なんですが、それが毎年群生するんで、

私としては、この花は進化したのかなと思うくらい。

7年ほど前から毎年種を蒔き、育てている

別荘オーナーのMさんと鈴木美津子さん

フシグロセンノウを毎年育てていらっしゃるM様にお話しを伺います。

 

◆ここは何年ぐらい前からですか?


7年ほど前から毎年種を蒔き、育てています。

初めの方がきれいでした、この頃は手抜きになっているから・・・
花もだいぶ疲れてきています。

 

11月中に種を蒔かないと翌春発芽しない

フシグロセンノウは11月中に種を蒔かないと発芽しない

◆種はいつ頃に?


10月中頃に種を採り、11月中に種蒔きをします。

11月中に蒔かないと春に発芽しません、不思議と・・・
お正月越して蒔くと、発芽しません。

どうしてか分かりませんけど。

 

種蒔きには園芸店の培養土を使用

種蒔きには園芸店の培養土を使用

◆土を作るって?


ただこの中に蒔くと、ザラザラして環境が良くないので、

園芸店の培養土をザーと敷いて、
その上に種を蒔いていくと、

4月の初めに発芽しています。

蒔きっぱなしで。 

 

苗を分けずそのまま育てたら群生するようになった

苗を分けずにそのままで群生する

◆いっぱい苗が出ますでしょ?それを分ける?

 

本当は苗を分けなければいけないけれど、私は手がないので、

そのままにしてるとこういう状態になります。

種を蒔いたまんまで。

 

 

 

元々自生していたものを囲って増やすようになった

元々自生していたものを囲って増やすようになった

◆これは絶滅危惧種でどんどん絶えているんですね。

 

もともと最初にあったんです。
はじめにこの辺にちょこちょとだけあったんです。


管理事務所のご主人は、ここにフシグロセンノウがあるわよと教えてくれて、
それを大事に囲っていたらこんなに花が咲いて。 

元々自生していたものを囲って増やすようになった

私は二代目なんですが、昔から 

父が「この花は上等ですから大切にしてください。」と言っていました。

 

でも何にもしないで 季節がくると咲いていたんです。

こういう栽培まではしていなかったんです。

 

 

 

 

敷地は南傾斜の日当たりの良い環境

実生の木は早めに駆除する

◆ここは南傾斜ですか?

 

そうです。やはり日当たりが良くないとね。
ここは最初日当たりが良くて大きくなったんですが、モミジだんだん大きくなって
日陰になったのでポツポツになってしまった。

 

 

 

フシグロセンノウは日向でも良く育つ

フシグロセンノウは日向でもよく育つ

皆さんはフシグロセンノウは日陰と思っているけど、

日当たりで良いんですよね。


植物図鑑やなんかでは、日陰を好むとあるけれど、

皆さん、南傾斜の日向でも、これだけ元気にきれいに咲いています。

 

肥料はほとんど使わず、秋に別荘仕舞の時に
丸い球の緩効肥料をパラパラと蒔く程度だそうです。 

フシグロセンノウ名前の由来

フシグロセンノウ名前の由来

このフシグロセンノウ、名前の由来ですが、

茎の節々に黒い節があるんです。


緑でなくて黒いから「フシグロ(節黒)センノウ」っていうんです。

 

カバレンゲツツジ

カバレンゲツツジ

カバレンゲツツジ、ここに自生していたそうですが、

私もここで育っているんですが、昔はこれしかありませんでした。
木々はありません。

 

大変にきれいに咲いて、花によって色の濃さが違うんですが、

軽井沢の花見はカバレンゲツツジでした。

 

今は園芸種で黄色もあるんですが、大変美しくきれいに咲きます。

 

これはちょっと毒です。

だからサルもシカも食べないで、残っていたんです。
大変美しい、軽井沢で見られるツツジです。

 

マツムシソウ

マツムシソウ

ここで大変うれしいのは、マツムシソウが咲いていることです。

どこもかしこも、家は無くなった、我が家も無くなった。

全国各地で絶滅危惧種の指定を受けています。

 

二年草なんですねマツムシソウは。

1年目は葉っぱの苗だけ、2年目に花が咲くんです。

それが交互に咲くんですが、その種が落ちないと、咲かない。

 

そして大変淡い藤色が美しくて野原の高原などでは目立ちます。

今、人気があるので園芸屋さんでいろいろな改良種がでています。

いろいろな色で大きく咲くのやら。だけど、これは天然のマツムシソウです。

二年草です。大変貴重!

 

みんなここにある花々は普通に昔は見られたんですが、今は保護しないと絶えますね。

もったいない、残念です。きれいだわ。 

 

フシグロセンノウ成長記録


ここからは、オーナーの記録ファイルの

一部をご紹介します。

フシグロセンノウの種

10月末、種と、花の後にできた種の穂

クロフシセンノウの苗

5月初め、発芽した苗をポットや鉢に移す


発芽2年目に立派に生育した株(5月)

毎日カラスアゲハが来て受粉を手伝う

庭いっぱいに咲いたフシグロセンノウ


オーナーの思い


2019年に100歳で亡くなった

女流画家 掘文子さん

 

フシグロセンノウとの出会いが

軽井沢に居を構えるきっかけと

なったそうです。

 

堀文子さんが

「気位の高い」この花に魅せられたように

オーナーもこの花の虜になりました。

<オーナーからひと言>

 

父から受け継いだ緑豊かなこの土地で

自然の神秘に触れ、

 

沢山の発見をしながらの生活は

幸せそのものです。

 

大自然の恵みと生命力は素晴らしく、

感動に溢れています。



※今回の動画は、YouTubeでご覧いただけます。

[鈴木美津子ガーデン散歩 VOL 15]


ローズガーデン&レストランカフェ「風の丘しいある」

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